masami71の日記

熊本市在住の68歳の年金暮らしです

ラジオ文芸館 最後のお便り

今朝は零度と寒い朝でした。
風が少し強く、体感的に寒かったです。
今日のラジオ文芸館は「家族の見える場所」に収容されてる短編小説です。
森浩美さん特徴の家族の物語です。
決して特別ではない日常の風景を切り取ったような短編です。
家族をテーマにそれぞれの家族の姿を見せてくれます。
私の場合は深夜のため、臨終の母に立ち会えず、その時の場面を昨日のように
思い出します。
この放送を聞いていると、目頭が熱くなりました。

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作:森 浩美  最後のお便り

アナウンサー寺田武は、4年間続けた自分のラジオ番組の最終回に臨もう
としていた。
その当日、入院中の母が危篤という知らせが入る。
寺田は、大事な時にいつも母から「おまえは物事を全うしたことがない」
と叱られてきた。
そのため「この番組だけは全うする」という気持ちで務めあげてきた。
「母さん。もう少し待っていてくれ」。
寺田は祈るような気持ちで放送が終わるとともに母の元に駆けつける。

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入社30年、TVからラジオへと流れて来たベテランアナウンサー寺田武は、
地味な番組だが「こころの焚火」を4年7ヶ月担当してきた。
そのラジオの生番組が、最終回をむかえることになります。
寺田の母親は、入院中なのですが、夜の放送なので、生で聴くことはでき
ないというので、いつも、テープに録音して渡していた。
母はそれを寒い廊下で聞いてたので、看護師から注意されていた。
ところが、最終回の放送直前、入院中の母が危篤だと姉から電話が入る。
武は子どもの頃から飽き性で、母には「お前は物事を全うしたことがない」
とよく叱られた。
武は番組が終わると、タクシーを飛ばして病院に駆け付けたけど、臨終に
間に合わなかった。
姉家族を病室から退出させて、武は母と二人になり、痩せて節くれだった
指に触れる。まだ温もりがある。
きっと魂はまだ近くにいるのだ。窓の外に目を向けると、何かの鉄塔の
先端に光が点滅していた。まるでオンエアーの赤いランプが点いているようだ。
「母さん、いいかい…」私はベッドに上体を載せると、母の耳元に口を近づけた。
「それでは、最後の・・・」とオンエアーの口調で話しかけた。