masami71の日記

熊本市在住の68歳の年金暮らしです

ラジオ文芸館 サヤンテラス

『トワイライト・シャッフル』の中に房総の海の見える町を舞台にした13の短編が入っています。
一人は寝たきりの夫を抱え、一人は失明するかもしれない、という不安を抱えた二人の元海女の話。 
イギリスの孤児が巡り巡って日本人と結婚してこの地に住むことになったが未亡人となってしまった女の話《サヤンテラス》
単身赴任してしまって夫のいない生活に鬱々と暮らす別荘地の女。
半分引退してホテルでピアノを弾いているジャズピアニストの話、《オ・グランジ・アモール》と 《ムーンライター》《サンダルズ・アンド・ビーズ》《ビア・ジン・コーク》《私のために生まれた街》など。

千葉県の外房に位置する海辺の小さな街。かつては海女漁が盛んに行われた鄙びた土地だったが、高台には外国の街並みにも見える別荘地が開け、波間にはサーファーが漂い、夏になれば都会から若い男女がやってきて海辺を賑わすようになった。
人も暮らしも変わりつつあるが、「ヤシの木に囲まれた白砂の小さな湾」(サヤンテラス)と打ち寄せる波だけは今も変わらない。そんな街。
その土地を舞台に、訪れるひと、去るひと、どこへも行けないひと、さまざまな人生の瞬間を切り取った13編が収められた短編集。
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(サヤンテラス)  作:乙川 優三郎
ケルト系移民の子オリーは、ふと目にした雑誌からアジアの東方へ思いを馳せるようになった。
インドネシアで日本人の哲生と出会ったオリーは彼と結婚し、哲生の故郷である日本の海辺の町で暮らし始める。
夕暮れに仕事帰りの哲生を待ったホテル「サヤンテラス」はオリーのお気に入りの場所になった。
やがて哲夫は亡くなり、44歳になったオリーは海辺のテラスで、彼の懐かしい声を聞くのだった…
語り:小見 誠広
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私の読書日記「ライブドア」より
オリーはケルト系移民の子、シングルマザーから生まれ、イギリスの養護施設で育ち、製粉工場で働いた。
30歳になった時、あこがれのアジアに旅行した。
バリ島で話しかけてきた男性「よしのてつお」と親しくなった。
彼は水産関係の仕事をしていた。
年がら年中魚を追いかけて研究している人だった。
市場で魚を選んでいたとき、「よしの」か気さくに彼女に
話しかけてきたのだ。
彼に誘われ、食事を共にし、話をするうち、彼の人柄に引き込まれた。
彼のユーモアは彼女の気持ちを解きほぐした。
彼はアメリカ英語で話し、オリーはイギリス英語で。
やがて、二人は結婚し、彼の郷里の房総に住んだ。
彼が仕事を終えて、帰宅するのを、オリーはホテル「サヤンテラス」で紅茶を楽しみながら待つのが習慣になった。
インドネシア語名の喫茶店がなぜ房総に?浜もバリをイメージさせ、オリーは
「よしの」との出会いに立ち帰ることができる場所だった。
「よしの」は彼女のために、廃屋を手に入れ、オリーはビンテージのムームーを和服地で作って売った。
不幸は突然訪れた。
「よしの」が愛犬と散歩の折に、くも膜下出血で倒れ、脳挫傷を負ってしまったのだ。
「よしの」は帰らぬ人となった。
40代になったオリーは、彼の声を時々聞くことがある。
彼の話しかけはあいかわらず、チャーミングだ。
そんなふうに彼の声が聞こえるうちは、オリーに言い寄る男がいても、決して気持ちがなびかない。
「よしの」はオリーを、人間というものがよく分かっていた。
どうしたら、人に居心地の良い場所を与えることができるかを。