masami71の日記

熊本市在住の72歳の年金暮らしです

熊本大学医学部附属病院の「そのとき」

救急・総合診療部 教授 笠岡 俊志
他病院をサポートし、転院も多く受け入れた

当院は三次救急医療機関であり、熊本県唯一の大学病院として他病院を支援する役割も担っています。
4/14の前震発災後は、30分後には病院長を本部長とする災害対策本部を設置しました。


当院は病棟・中央診療棟は免震構造、外来診療棟・管理棟は耐震構造です。
このときは建物やライフラインにはほとんど被害はなく、緊急招集された職員の協力で、入院患者への対応など通常業務に加えて、トリアージなど多数傷病者の受入業務を分担して行いました。
4/14?15にかけての受入人数は約50名。
比較的軽症の外傷が多かったですが、心臓疾患など急病への対応も行いました。
一方、4/16の本震では、耐震構造である外来診療棟などに大きな被害が発生し、水道・ガス停止などライフラインにも影響が出ました。
その中でも、来院する傷病者が前日よりも多い約200名を受け入れ、救急車も平時の4倍である20台を受け入れました。


また、被害の大きかった「熊本市民病院」から約80名の転院をはじめ、他院からの搬送、転院受け入れも多くありました。
災害対策マニュアルを考慮しつつ各部署での臨機応変な活動に努めました。
特に救急外来が比較的狭く、診療場所を工夫しながらの対応でした。
同時に、県庁や益城町の災害対策本部へのDMAT派遣や、専門診療科による感染症やDVT(深部静脈血栓症)予防などの支援活動も行いました。
その中で研修医も活躍しました。
救急科ローテーション中の研修医はシフト制で救急患者の診療にあたり、その他科のローテーションの研修医は、各科で急増した入院患者の診療などに対応しました。
地震直後は一般外来診療休止や手術の延期などを余儀なくされましたが、通常診療に早く戻すための努力も行いました。
発災後数ヵ月は救急患者が1.5?2倍に増加し続け、心疾患や呼吸器疾患、脳神経疾患などの急病の搬送も相次ぎました。
救急科ローテーションの研修医と共に増員体制で対応。
さらに被害の大きかった阿蘇医療センターに医師、看護師を派遣したり、地域医療支援センターの医師を益城町に派遣して避難者対応に協力するなど、県内唯一の大学病院としての最大限のサポートも長期的に行いました。
このような災害発生時は特に、医師は専門診療科に寄らず総合医としての対応力が求められることを、改めて実感させられました。
病院全ての職員に、災害医療の教育・研修が必須であると考えます。
研修医にとっては、当院で必修となっている救急研修の重要性を再認識する機会になったようです。
医師として、救急・災害医療へより良い対応ができるような総合力を備えるための、大きなきっかけとなったはずです。
熊本大学医学部附属病院
今回の災害でも投入されたヘリコプターの存在です。
県では2012年からドクターヘリを導入していますが、この「飛び道具」は重症患者さんの搬送に大活躍しました。
今回はドクターヘリだけでなく、消防ヘリや自衛隊海上保安庁のヘリにもご協力いただきましたので、運用調整には苦労しました。
自衛隊や消防のヘリは管轄が違いますが、把握しているだけでも、14機のドクターヘリで76人の患者さんを搬送しています。
県内の鉄道や道路、空港が被災して陸の孤島状態になったことで、ますます災害時のヘリの有効性が証明できたのではないでしょうか。
最後に、九州の国立大学のうち救命救急センターの指定を受けていないのは熊本大学だけなんですね。
今回の地震を契機として、大学として災害医療に対応できる優秀な救急医を育てていきたいと思います。