masami71の日記

熊本市在住の68歳の年金暮らしです

ラジオ文芸館 乃南 アサ作 青年のお礼

『青年のお礼』は「行きつ戻りつ」の12編の連作短編集の中の一篇。
どの作品も「悩みを抱えたまま旅に出た主婦」が主人公です。主人公が抱える悩みは、夫・姑との確執や子供を亡くした悲しみ、金銭問題など様々です。
旅先の風景(秋田・熊本・北海道、など全国各地)も、ほど良く織り込まれて、物語に彩(いろどり)をそえています。

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作:乃南 アサ
幼い息子をなくして何年たっても心の傷を癒すことのできない女性が、レンタカーで佐渡をドライブする。
途中、ヒッチハイクの青年を車に乗せるが、青年はすべての行動がマイペースで、図々しくもあった。
女性は腹を立てながらも青年の姿が息子に重なる。
話をする内に、青年が自分以外のすべての家族を交通事故で失ったことを知る。
お参りに訪れた「賽の河原」で、青年が主婦にした「お礼」とは…。

語り:高橋 淳之
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舞台は新潟・佐渡で、最北端までの道のりです。
幼い息子を亡くして何年もたつのに彼女は立ち直れないでいる。
そして今、「賽の河原」を目指していた。
そこへヒッチハイクの青年に出くわす。
彼女は青年に、なぜヒッチハイクをしてるのか問いただしたけど、
財布を忘れたとか要領が得なかったけど、車の後部座席に乗せた。
青年は賽の河原のある「二ツ亀」を目指していた。
「彼女」も佐渡の賽の河原を旅していた。
賽の河原をあちこち巡り、最近では佐渡の賽の河原によく来ている。
青年は10代、それとも20代なのか、足に豆ができたとか、小木の民宿に財布を忘れてきたとか いい、彼女は青年を乗せることには躊躇を覚えたけど、彼女の人の好さが断れなかった。
しかし、青年を乗せてやるも、彼は不愛想だし、走り出すとすぐ止めさせ、「ここの風景を見ておきたい」と走り出す。
足に豆ができたと、言ってた割にはおかしい。
そして再び車を止めさせる。彼女も車を降りて彼の後についていく。
波食甌穴(おうけつ)群があるという。そんなに美しいのなら彼女も、記念物を見ておきたかったと心の中でぼやく。


日本海の荒波が生み出す平根崎海岸の奇観
尖閣湾」の北部、平根崎海岸の岩盤斜面約500mにわたる無数の円形の穴。
海水の渦紋浸食によってできた国内最大規模の甌穴群で、国の天然記念物。

青年は3度目にも車を止めさせた。
「岩場の写真を撮ってくるから。1時間後に戻ります」と。
青年の無作法を許せない気持ちの中で、亡くなった息子が生きていたら、彼のような青年になっているだろうかとも思える。
彼女は息子を5歳の時に亡くしている。
「ねえ、ママ」と話しかけてきた息子が手元からいなくなった悲しみ。

「二ツ亀」に到着する。
ハマナスの花、稲穂が出たあたりの先には5センチほどのお地蔵さんが
無数に立っている。
赤い風車が風が吹くたびに回る。

青年は父母妹弟を交通事故で昨年亡くしていた。
青年は友達と波乗りに出かけて難を逃れたのだという。
家族に会いに賽の河原に来たのだった。

「彼女」は5歳の息子一人を亡くした。亡くした家族の数が悲しみに比例するものではないが、この青年が自分と同じような悲しみを抱いていたとは。
青年に親しみを覚えた。
「彼女」は時薬(ときくすり)のおかげで、最近やっと息子のことを語れるようになった。
青年は彼女に「息子さんの名前はなんていうんですか?」と聞き青年は
「ゆうき!かあさん元気でやってるぞ」と海に向かって大声で叫んだ。
最後に青年は「車に乗せていただいたお礼です」と・・・・
海に向かって叫ぶところは泣けました。
死者に向かって言えるのはこちらで元気でやっているから心配しないで!という言葉ですね。
お盆を迎える季節にふさわしいような、じーんとくるお話でした。