masami71の日記

熊本市在住の72歳の年金暮らしです

藤沢周平作 滴る汗

今日は曇り空で蒸し暑かったですね。
NHKのラジオ文芸館は、藤沢周平作{滴る汗}でした。
藤沢さんの風物・自然の表現はすばらしく、その中に自分が溶け込んでしまう
錯覚さえ感じます。
それに、人物描写や動きや会話は、まるで横に居て聞いてるような臨場感を
感じます。
今回は公儀隠密の話で、テレビドラマのような立ち回りでなく、市井に溶け込んで
密かに藩の動静を調査して、公儀に報告するのである。

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作:藤沢 周平

祖父の代から東北の小藩に商人として出入りしている森田屋宇兵衛は、実は3代続く
公儀隠密の身。
城中で声をかけてきた徒目付けの鳥谷との雑談のなかで、宇兵衛は胸の鼓動が止まる
想いをした。
「城下に公儀隠密がひそんでいることが分かり、しかも2、3日で片がつく」というのだ。
自分のことと思い込んだ宇兵衛は早手回しに手を打ったのだが、それは誤りであった。
しかしその事に気づいた時はもう遅かった。
宇兵衛は全身から滴る汗をぬぐいながらも必死に逃げ道を探すのだったが・・・。
3代続けて身分を隠しながら公儀隠密として生きる主人公を通してこの世のやるせなさ、
人の世の取り返しのつかないわびしさを描く。
「時雨みち」(新潮文庫)所収

語り:石澤 典夫
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宇兵衛は自分の素性がばれたと勘違いし、思考力を失う。
人は先入観にとらわれると、全て自分のことを言われてる錯角に落ちますね。
かつて森田屋の下男をしていた茂左衛門に、宇兵衛は病で報告書を変わりに持たせた事が
あったのである。
つまり茂左衛門が訴えたと勘違いし、殺害してしまうのです。
しかし、殺害現場に煙草入れの根付を落としてしまう。
実際には他にも公儀隠密がいたのです。
宇兵衛がもうひとつ理性を失ったのは、徒歩目付(かちめつけ)鳥谷 甚六(とや)の行動
をあまりにも意識しすぎたのでしょう。
鳥谷は宇兵衛から借金をしたかっただけですね。