masami71の日記

熊本市在住の72歳の年金暮らしです

日銀は大株主(2)

弊害を指摘する声も
日銀のETFの買い入れには、株式市場を下支えしているという評価の一方で、落胆する投資家もいます。
投資歴15年で、株式投資コンサルタントをしている横浜市の44歳の男性は「日銀のETF買い入れで、株価が一律に押し上げられた結果、適正価格とはいえない銘柄も多い。
株価の振れ幅が小さくなり、割安な銘柄に投資するメリットが低くなったので、最近は取引回数を以前の4分の1に減らした」と話していました。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「企業の経営者や株主は、株価というシグナルを通じて経営上の問題に向き合ってきたが、日銀のETF買いで、企業の業績に関係なく株価が一律に押し上げられれば、課題を見過ごすことになりかねない」と警鐘を鳴らしています。
日銀が企業の“筆頭株主”に?
さらに、井出さんが問題視しているのが、日銀がETFの購入によって、多くの企業の“隠れた大株主”になっていることです。
井出さんの試算によると、このまま年間6兆円のペースで購入を続けた場合、来年7月末には、日銀は、電機部品メーカー「ミツミ電機」の株式の20.6%を事実上保有する筆頭株主
ほかにも、半導体検査装置メーカー「アドバンテスト」の株式の18%、非鉄金属メーカー「東邦亜鉛」の13.6%を保有する実質的な筆頭株主になる見通しだとしています。
ただ、株主総会で議決権を行使できるのはETFの運用会社なので、日銀が議決権を行使するわけではありません。
いわば、日銀は「モノ言わぬ安定株主」ともいえる存在で、株主との対話を重視する時代の流れに逆行するのではないかとも指摘されています。

企業は売却リスクを懸念
日銀のETF購入には別の懸念も指摘されています。
将来的に日銀がETFを売却する際に株価が下落するリスクです。
日銀が実質的な筆頭株主になっているあるメーカーに話を聞きました。
担当者は「日銀がデフレ脱却を目指してETFを買っていることには反対しないが、将来、ETFを売却することになれば、株価が急落しないか心配だ。
株価の低いときには売却を控えたり、少しずつ長い期間をかけて売却したりするなど配慮してほしい」と話していました。

問われる政策の持続性
デフレ脱却に向けて、大規模緩和を続ける日銀。
ことし4月には、賃上げや設備投資に積極的な企業の株式を組み込んだETFを買い入れ、資産運用会社に条件を満たしたETFの開発を促すなど、ETF市場の活性化にも力を入れています。
しかし、日銀が今のペースでETFの買い入れを続けると、1年後の保有額は15兆円に上ることになります。
今後、市場全体が拡大しても、日銀の影響力の大きさが変わることはなさそうです。
株価の形成や企業統治などに「ゆがみ」が生じる副作用が指摘されるなか、日銀がいつまでこの政策を続けるのか。
政策の持続可能性が問われています。
大江麻衣子 報道局経済部