人口300人の島に200匹…“猫密”の癒やし求めて 長崎県境・湯島へ
青がまぶしい。車で熊本市を出て1時間半。きらめく有明海を横目に上天草市へ。
目指すは、長崎県島原半島まで海を挟んで約6キロの県境に位置する湯島だ。
人口約300人に対し約200匹の“猫密”の島と聞き、興味を持った。
普段は事件や事故の取材に追われ、大好きな旅行もお預け状態の私(24)の願いは一つ。あぁ、癒やされたい―。
午前9時、手始めに上天草市役所の観光おもてなし課を訪ねると、職員の森陽香さんが「実は私、湯島出身なんです」と島の魅力を愛情たっぷりに教えてくれた。
観光マップを手に入れ、市役所から5分の江樋戸(えびと)港で定期船に乗り込んだ。
「にゃー」。30分の船旅を楽しみ、島に降り立つと猫がお出迎え。
そばには「neko」と書かれた赤い看板。
観光客に人気の猫スポットの目印で、島内に7カ所あるという。
しゃがんで観察しようとすると、猫たちはすまし顔で私の影に集まり足元にごろん。まあ、なんて自由なの。
よく見ると、猫の中には首輪を着けた猫も。商店の渡辺真美さん(50)によると、親とはぐれて人間に育てられた猫だとか。「迷子になりやすいから首輪を着け、ミルクをあげて大事に育てているの」。
猫社会に首輪の有無は関係ない。じゃれ合う姿に心が和む。
昼食は当日予約した食堂「南風泊(はえどまり)」へ。
店主の松尾和枝さん(68)が「前日予約なら、もっと豪華なのよ」と出してくれたのは取れたてのタイと太刀魚、コウイカの刺し身に、あじフライ、赤飯。
「刺し身はお代わりあるからね」。身が締まった白身のうま味、コウイカの甘み。あぁ、絶品。
腹ごなしで島の頂上の峯公園へ。道中の諏訪神社で旅の安全を祈願した。
湯島は1637年の島原・天草一揆(島原の乱)で島原・天草両軍が談合したことから別名「談合島」とも。
境内の「鍛冶水盤」はその際に鍛冶職人が武器作りに使ったと伝わる。
約380年前、厳しい弾圧にさらされた人々に思いをはせた。
神社を過ぎると急坂。息を切らして足を進めること20分。峯公園の周りに、名物の湯島大根の畑とカスミ草のビニールハウスがあった。
湯島大根の旬は12月から2月で、残念ながら11月末の取材時は収穫期の前だった。
島の西側に下ると真っ白な湯島灯台が見えてきた。1916年建造のレトロな姿が「恋人の聖地」として人気という。灯台の先には迫力ある雲仙岳。絵はがきのような光景に圧倒されながら、長崎との近さを実感した。