「山鹿灯籠まつり」最大の呼び物「千人灯籠踊り」が4年ぶりに開催されました。やぐらで踊る大役を担った娘と、支え続けた母親。親子2代の物語です。
4年ぶり開催の「千人灯籠踊り」
山鹿市の夏の風物詩「山鹿灯籠まつり」の最大の呼び物「千人灯籠踊り」。頭に和紙で作られた「金灯籠」を乗せた1000人ほどの女性が輪になり、「よへほ~、よへほ~」の民謡に合わせて優雅に踊ります。コロナ禍で中止されてきましたが、ことし4年ぶりに開催されました。この1000人の輪の中で、ひときわ目立つやぐらで踊りを披露するのは、選ばれた20人ほどの踊り手たちです。
19歳の踊り手 初めての挑戦
やぐらの踊り手に初めて挑戦するのは、熊本市に住む中内莉音さん(りおん・19歳)です。莉音さんは2年半前に踊り手に選ばれましたが、コロナ禍の影響で千人灯籠踊りは中止となり、去年とおととしはやぐらで踊れませんでした。しかし中止の期間も、本番の舞台を夢見て練習を重ねてきました。
莉音さん「少し不安はあるけど、本番が楽しみです。」
練習は毎週1回 通年続けられる
やぐらの踊り手は、選抜された女性20人ほどです。かつては山鹿市内に住む女性に限られてましたが、最近は踊り手の減少により、山鹿市以外に住む人も参加できるようになりました。ただし、練習は年間を通して行われ、週1回以上は必ず参加しなければなりません。見る人の目を引く優雅で美しい踊りを披露するためです。 踊り手最年少の莉音さんは、幼いころから10年近くにわたってクラシックバレエを習ってきたこともあり、灯籠踊りでの指先のしなやかな動きや、 きれいな姿勢も決まっています。しかし、若さから、動きがわずかに速くなりがちです。先輩からは、「もうちょっと、大人の感じのタイミングを身につけてね。」とアドバイスも。
莉音さん「手や顔の角度、目線をみんなと合わせるのが難しいです。」
踊りがつなぐ母娘のきずな
莉音さんにやぐらで踊ることをすすめたのは、母親の由香さんです。 祭りの地元、山鹿市で生まれ育った由香さんは、これまで千人灯籠踊りに参加したことはありますが、やぐらで踊ったことはありません。千人灯籠踊りの中心のやぐらで踊ることは、由香さんにとって、子どものころからの夢でした。
母 由香さん「もし娘が生まれたら、やってもらいたいと思っていました。山鹿の素晴らしい伝統芸能を広めて欲しいです。」
中内さん親子が現在暮らしているのは熊本市。そのため、練習が行われる山鹿市へは毎回、由香さんが莉音さんを車で送り迎えをしてきた。また、練習で使う浴衣の洗濯やアイロンがけもして、莉音さんが練習に集中できるように支えてきました。
由香さん「灯籠踊りがつなげてくれるというか、親子のきずなみたいになっているなと感じています。」
幽玄のいざない 千人灯籠踊り
いよいよ祭り本番の8月16日の夜。山鹿小学校のグランドでは、地元をはじめ県内外から参加したそろいの浴衣姿の女性たち、およそ1000人が「金灯籠」を頭にのせて踊り始めました。民謡「よへほ節」の調べに合わせ、ゆっくりと歩みながら踊ります。 会場が暗くなると、明かりがともった金灯籠が揺れ、幽玄の世界に人々は酔いしれていました。中央のやぐらの上には、莉音さんと、選ばれし踊り手が見事な所作を披露します。クライマックスは、やぐらの踊り手たちだけが踊る「よへほ節・上下組踊り」。二人の踊り手がペアとなり、立位と座位で同じ踊りを繰り返します。莉音さん、2年半の練習の成果を見事果たし、堂々と美しい踊りを披露していました。
由香さん 「やぐらの上で初めて踊っている娘を見て、やっぱり涙が出ました。すばらしかったです。夢をかなえてくれてありがとう。」
莉音さん「祭りに出て、あらためてもっといろんな人に灯籠踊りを見てもらいたい、知ってもらいたいと思いました。」
来年の千人灯籠踊りに向けて、祭りが終わった直後から、莉音さんはさっそく練習を始めています。