masami71の日記

熊本市在住の72歳の年金暮らしです

明川哲也作「花丼」

先日の「ラジオ文芸館」で明川哲也作「花丼」の朗読がありました。
「花丼」は月刊誌『PHP』の「川辺の町の物語」を単行本化した短編
小説集の中にあります。

とある町の川沿いにある小さな食堂「大幸運食堂」。
主の継治(つぐはる)さんが一人で営む店は、かつてそこそこ繁盛して
いたが、近所の大型スーパーが閉店して以降、客足が途絶え、
経営はかなり厳しい。
おまけに、農業を営む兄から送りつけられた食用の「菊の花」の箱が
山積みで、どうすれば処理できるのか途方に暮れる。
ついには、「いっそのこと首でも吊ろうか」と思いつめるようになる。
そんなある日、いつものように河川敷を散歩していた継治さんは、
川の中で膝まで水につかりながら、さらに深いところに進んで行く
男を見かけた。
入水自殺をする男を助けた継治さんは、食堂兼自宅に連れて行き、
濡れた服を着替えさせ、まかない飯を食べさせた。
男は看板屋で仕事が無く、自殺をしようとしたとのこと。
継治さんは自分と同じだと思いつつ、その男を励ました。
男はご馳走してもらった料理の名前を尋ねたら、継冶さんは一考して
花丼と名付けて答えた。
ある日、看板に書いてある「花丼」を下さいと、今にも自殺しそうな
お客が入ってきた。
継治さんは急いで外に出て看板を見た。
それからまたお客が来て、継治さんは「花丼」ですかと尋ねると
「カツ丼」ですと注文した。
継治さんは何かが変わると思えた。
「花丼」とは食用菊としらすを使ったどんぶりで、初めて知りました。

「大幸運食堂」(PHP研究所)所収

語り:原田 裕和