能登町 避難所で体調不良訴える人増加 「災害関連死」の疑いも
石川県能登町では地震の発生から10日となり、避難所で体調不良を訴える人も増えています。
避難所で診療にあたる医師は災害関連死を防ぐには医療スタッフを増やすなど、医療体制の強化が必要だと訴えています。
今月1日の地震で震度6弱を観測した能登町小木の避難所には地震から10日となる今もおよそ110人が身を寄せていて、体調不良を訴える人が増えています。
能登町では秋田県の医師や看護師、それに薬剤師、8人からなるチームが町内の避難所を巡回して、被災者の診療にあたっています。
11日は発熱やせきなどの症状を訴える人を診察したり、薬を処方したりしていました。
避難を続けている50代の男性は「高齢者が多く避難生活が長引くにつれ体調不良を訴える人が増えています。医療チームの巡回はとても助かります」と話していました。
能登町では10日午後2時の時点で、避難所で体調を崩した高齢者2人が亡くなっていて、町は「災害関連死」の疑いがあるとしています。
町内には避難所が62か所あるということで、診療にあたった秋田赤十字病院の土佐慎也医師は「医療スタッフが足りず、まだ巡回できていない避難所があるのが現状だ。災害関連死を防ぐためにも医療体制の強化が必要だ」と話していました。
感染対策ポイントまとめたチェックシート作成
避難所での感染症の広がりを防ぐため、日本環境感染学会の支援チームなどはポイントをまとめたチェックシートを作成しています。
支援にあたる医療関係者や自治体職員などに向けて作られたもので、このうちのいくつを満たせば十分などといった基準があるわけではなく、避難所ごとに感染リスクを把握し改善に向けて支援するとともに、よりリスクが高い避難所の二次避難にもつなげていくことがねらいです。
チェックポイントまとめ
【避難所の環境】
▽居住エリアで1人当たり2畳分のスペースが確保され密集していないか
▽換気扇や空調設備による換気を常に実施しているか
▽窓やドアを開けて換気をしているか
【衛生物品】
▽マスクがある
▽体温計がある
▽消毒液がある
【手指衛生】
▽手洗いのための水が十分に供給されている
▽手洗い用の液体せっけんが使用できる
▽アルコールの手指消毒液が使用できる
【汚物処理】
▽20人に対して1つを目安に、避難者に対してトイレが十分にある
▽おう吐や下痢がある人のトイレを専用にしている
【体調管理】
▽毎日の避難者の症状を確認している
▽症状がある人について速やかな相談先や受診先がある
【症状がある人への対応】
▽別室に隔離できている
▽ついたてなどで覆っている
▽ほかの避難者から2メートル以上離している
過去の大規模な災害でも、避難所で感染症の患者が相次いだことがあります。
東日本大震災では、岩手県内の避難所で数十人規模でインフルエンザの患者がでたほか、2016年の熊本地震でも、南阿蘇村の避難所を中心にノロウイルスやインフルエンザの患者が相次いで確認されました。
チェックシートは、東日本大震災の直後に作成し今回の地震の発生を受けて改訂したものです。
作成した日本環境感染学会のDICT=災害時感染制御支援チームで、感染予防対策が専門の、東京医療保健大学大学院菅原えりさ教授は「感染症が専門の支援者では無くとも早い段階で課題を発見し、介入できるようにするために作成しました。人間が生きている以上感染症になるリスクは常にあるので、感染が発生したとしても小規模で終わるようにし、避難生活を健康に送ってもらえるようにしたい」とコメントしています。